
「Read & Research Night」イメージポスター制作プロセス記録
―― 試行錯誤そのものをデザインするということ
このイメージポスターは、最初から完成像が見えていたわけではない。むしろ真逆で、「夜の博物館で研究する人たちを集めたい」という、かなり抽象度の高い構想から始まっている。イベント名が固まり、ロゴが生まれ、次に求められたのは“見た瞬間に惹きつける一枚”だった。
最初のキーワードはとてもシンプルだった。
「モノクロ」「古い本の図版」「初期の活版印刷の挿絵」「夜」「博物館の大きなテーブル」。
ここに「ダビンチのラボみたいなムード」「なんか面白そう!と人を吸引する感じ」という感覚的な要請が重なる。

最初のプロンプトでは、
「夜の博物館の大きなテーブルで本を読んだり、タイプライターを打っていたり、機器をばらして修理していたり」
という“行為”が主役だった。だが出てきた絵は、恐竜骨格や石膏像が並ぶ、やや一般的な「夜の博物館」像だった。悪くはない。しかし、方向はもっと“研究室寄り”で、“知の作業場”に寄せたかった。
そこで次の修正が入る。
「恐竜とか石膏像を、グーテンベルク印刷機や天球儀、産業遺産的なものに置き換えてほしい」
「人間の顔が現代的すぎる。マルコ・ポーロ時代みたいな感じに」
この段階で、時代設定は一気に中世〜ルネサンスへとシフトする。重要なのは、特定の年号や人物を描くことではない。「いつとも言えないが、確実に“現代ではない”」という時間のにじませ方だった。

次に違和感として浮上したのが光源だ。
ランプのシェードが布っぽい、という非常に鋭い指摘が入る。確かに布シェードは近代的で、ダビンチ的世界観とは噛み合わない。
そこでプロンプトはこう更新される。
「金属製のシェードにしてほしい」「月明かりは強調していい」「夜のコントラストが欲しい」
ここで“二重光源”がはっきり意識される。
人工の弱い光(ランプ、のちに蝋燭)と、自然の冷たい光(月)。
夜の研究という行為は、この二つの光の間にある、という構図が定まっていく。

しかしまだ完全ではない。
「ペンダントライトが浮いて見える」
この一言で、近代性は決定的に排除される。最終的に選ばれたのは「カサのない蝋燭」だった。
さらに、
「ダビンチの時代っぽく」
「少し解像度が低い感じ、線が入っている感じ」
「むかしの絵本の挿絵みたいに」
ここで方向性は完全に確定する。
写実でも、精密でもなく、**刷られた線の集合としての世界**。
インクのムラ、版ズレ、細かい線の重なり。それらが情報量を下げることで、逆に想像力の余白を生む。

最終的に出来上がった絵には、ロゴも文字も入っていない。
だが見ればわかる。
本を読み、書き、分解し、組み直す人々。
蝋燭の炎と月明かり。
天球儀、印刷機、積み上がる書物。
これは「イベントの説明図」ではない。
「ここに来たら、こんな夜がある」という予告編だ。
振り返ると、この制作は一貫して「何を足すか」ではなく「何が時代的にズレているか」を削ぎ落とす作業だった。恐竜を消し、石膏像を消し、布シェードを消し、現代的な顔立ちを消す。そのたびに、世界は少しずつ濃く、しかし静かになっていった。
そして最後に出た言葉が、
「素晴らしい。。素晴らしいよ。。」
この一言で、すべてが報われたと思う。
試行錯誤そのものが、このイメージの奥行きを作っている。
Read & Research Night は、こうして“見る前から参加したくなる夜”として、確かな像を持った。
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