なんという物騒なタイトル!東映の「散歩する霊柩車」を配信で見てみました!タイトルの通り全編にわたって霊柩車が登場します。しかもその運転手は渥美清(のちの寅さん)です。いわば霊柩車によるロードムービーのようなものです。

映画としても実に面白いブラック・コメディになっています。
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公開年は1964年(昭和39年)なのでその当時のクルマがたくさん見られるのも楽しみのひとつ。霊柩車が主役だけに他のクルマとのコントラストも強烈です。
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霊柩車の風格あるデザインも目を引きます。フロントウィンドウが二分割なのも時代を感じさせます。
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銀座などの都市部を走るシーンも多く都電やタクシーなども鮮明に写っています。
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こちらはスタジオ撮影による霊柩車の運転シーン。渥美清は抑えた演技ながら後半ちょっとした不気味さも漂わせて登場シーンは少ないもののさすがであります。
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主演は西村晃です。「帝都物語」で学天即を作っていた人ですね。この作品ではフランケンシュタイン映画のような怪奇的な照明を浴びて実に楽しそうに演じています。
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キーを握る死体役(?)は春川ますみ。「トラック野郎」シリーズで子沢山の愛川欽也の奥さん役でお馴染みですね。
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名前がタイトルに出ただけでうれしくなる助演陣!小沢昭一はワンカット出演。浜村淳はどこに出ていたか見落としてしまいました。「仁義なき戦い」でお馴染みの金子信雄がちょっと意外な医者役です。最初出てきた時はわからなかったくらいです。
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この監督さんの作品は初めてだったのですが演出も編集もカメラもとてもシャープで今の感覚で見ても面白かったです!このカットなんて銀座をパンするときにカメラを90度回転させてそこに監督名を入れていますからね。なかなかのくせ者!
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霊柩車の走行シーンは望遠レンズで撮ってるショットが多くその圧縮効果で当時のクルマがたくさん見えて何度も止めながら楽しめます!
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霊柩車のうしろが見えるカットは少ないのですが左右にベース車のテールランプが残っているのか?面白い構造です。
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タクシーと都電が並走するシーン。この頃の東京はまだ高い建物が少ないのでピーカンのショットでは道全体に太陽の光が満ちていてとても明るく乾いた印象です。
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これは赤坂見附のズームバックのショットです。掘に水があまりたまっていなかったり今とは全然違う建物でこれまた10秒バックボタンを連打して何度も見てしまいます。

後半のクライマックスでは御茶ノ水にある「山の上ホテル」の外観も使われています。ホテルの中で起こることを考えると実在のホテルがタイアップする意味あるのかな?というのが現代の感覚ですが面白いです。ホテルの中はおそらくすべてセットだと思います。
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昭和の映画がいいのは上映時間が1時間半以内ということ。コンパクトにまとまっていてテレビのドラマを1本みたくらいの軽い読後感が楽しいです。

昭和39年、東京オリンピック直前の東京を走りまくる霊柩車。カリカチュアされた滑稽な人物たちが織りなすブラック・コメディ!映画としてもとても面白いので昭和タイムスリップを兼ねてぜひ御覧ください!