昭和50年から55年にかけて所沢のこぶし団地に住んでいたことがありました。

豆腐のようなカタチで2軒が1つの建物になっている団地なのですが高層ではなく、戸建て?っぽい家がたくさん丘陵地帯に建っています。その中心に「中央公園」という公園があったのですが廃車になった古い消防車が置いてあったんです。

この消防車が子供たちの人気スポットで自分も小学校入る前でしたからよく遊びました。

赤い塗装はすでに剥げていて古びていたのですがボンネット型の消防車で時代を感じさせます。そのふっくらとしたフロントにはマスコットのようなものがついていてそれをカチカチと動かせたんです。そして運転席にはまだハンドルがついており、鉄っぽいハンドルだったので遊具としてあとから取り付けたものか実際の消防車に使われていたハンドルかは定かではありません。

この頃の写真は我が家のアルバムにはあるのですが消防車が写っているものはなかったんです。

でもあの消防車はいつごろ製造されたものでどこのメーカーの消防車なんだろう?とずっと心の片隅で思っていました。古い日本映画などを配信で気軽に見られるようになると1950年代の映画には今のパトカーや救急車とは違うサイレンの音で走るシーンがあり身を乗り出して見ていました。

ちょっとしたタイムスリップというか、自分が生まれる直前の時代ってなんか不思議なリアリティとノスタルジーがあるんですよね。自分は生まれてないけど自分の親は青春期だったわけじゃないですか。こういう景色の中で20代を過ごしたのか~と想像すると面白いですよね。

それで自分の子供が小さかった頃に四谷にある消防博物館に行ったんです。そこには1950年代の消防車が展示されていて「ちょっとあの中央公園にあった消防車に似てるかも」と思ったんです。でもよく見てみるとボンネットの先端の感じや車体のディテールが記憶と違うんです。ブログにも記事にしたもののその後手がかりはありませんでした。

ところが先週名古屋にある「トヨタ博物館」の資料室に貼ってあったポスターを見て記憶が蘇ったんです!あああああああ!これだ!中央公園に置いてあった廃車の消防車はこれだ!と確信しました!
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まずボンネット先端のマスコットのようなものの形状が記憶に一致します。丸い先端がカチカチと動きましたから。さらに運転席うしろのサイドバーのようなものも記憶と一致します。運転席は子供の頃によく遊びましたからサイドステップがあったり座席のラインに合わせた手すりがあったのもよく覚えています。フロントガラスのガラスはなかったけど二分割されているウィンドウフレームも記憶どおりです。

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これはニッサンのF-380型消防車という車種だそうです。

この消防車は1952年に発売された車種なので現役を引退して廃車になってから23 年後の1970年に公園で遊具になっていたわけです。終戦から7年後に発売された消防車だったのかぁ~と胸熱になりました。

きっと所沢市役所に行ってちゃんと中央公園に寄贈された廃車の消防車の書類などをみつければ照合できるはず!そこまではしませんが、自分のおぼろげな記憶がこの消防車の写真を見ることでディテールまで立ち上がってきたのは感動でした!なにせ公園に遊具といて置いてあった頃は既に色も褪せ塗装もボロボロで朽ちる寸前の廃墟そのものでしたから。

でも面白いもので昭和の公園や幼稚園にはけっこう廃車を置いて子供たちの遊び場にしてたんですよね。自分は所沢市のけやき幼稚園というところに1年だけ通った記憶があるのですがこの幼稚園にもスズキのフロンテかホンダのN360あたりの廃車が遊具として置いてありました。その後に若松小学校に行きましたがそこにもクルマのタイヤがたくさん遊具として使われていました。特にトラックか空港で使うようなクルマのタイヤを3つぐらいたばねた遊具は記憶によく残っています。

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話をニッサンの消防車に戻しますと当時のカタログも展示されていて食い入るように見ました。運転席のうしろに消火栓がついているのも記憶通りです。ここにパイプをつなげて消火活動をするごっこ遊びみたいのをした記憶があります。

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トヨタ博物館の資料館には膨大なクルマの資料が保存されているのですが商用車のカタログというのは結構珍しいので展示品はどれも楽しくて時間を忘れるほどでした。

今回長い間うっすらとした疑問だった所沢こぶし団地の中央公園に昭和50年(1975年)ごろにあった消防車が「ニッサンF-380型消防車」であることがわかり頭の中の霧が晴れたような爽快な気分です!

仕事で遠くまで行ったら直行直帰せず寄り道してよかった!「座右の銘は道草」の面目躍如といったところです!そして「トヨタ博物館」がライバルのニッサン車にも関わらずたくさん展示してくれていたことに感謝します!

以上、名古屋の「トヨタ博物館」からお送りしました!

※この記事は「原稿執筆カフェ」の営業中に店長が書きました。