「男はつらいよ」ってじじいばばぁが見る映画と思って全然若いときは興味なかったんです。

実際映画館で見たことなかったし1970年代の都市風景とかに興味が出てきてAmazonプライムになってから見始めてたくらい寅さんに特別な思いれはありませんでした。どっちかっていうと寅さんをもっとお下品にした「トラック野郎シリーズ」が好きってこともあり中年おじさんのプラトニックなストーリーとか見てられねぇぜって感じもあったくらい。

なのに今回映画館で新作を見たのは仕事でちょっと絡みもあったりわりと消極的な理由だったんです。

ところが、見たら、これが、素晴らしかった!!!!!想像以上にというか、やられた!!!

同時期に宇宙オペラが完結するみたいなディズニーの大作が公開されてたんです。これがとんでもなく退屈極まりない駄作なんです。同じこと何回も繰り返しているだけでなんの新鮮味もなくファンにおもねった目配せばかりが目について辟易とする感じ。テレビシリーズのような細かいカットの連続で映画的なカタルシスが皆無。途中で映画館出ようと思ったくらい退屈でした。

それに比べこの寅さん!スゴい!!!

なんかノスタルジックな回想シーンばかりでカビ臭い映画なんだろうななんて思っていたら4Kデジタル・リマスターされた過去作品のシーンが違和感なく現在のシーンにつながっておりかつ物語も作品と共に年を重ねた俳優たちの現在をドキュメンタリーのように取り込み重層的な深みが増しているではありませんか!

そして観客は寅さん扮する渥美清が亡くなっていることをわかって見ているわけですが映画ではそのあたりを絶妙な距離感で放置するんです。山田洋次監督のことだから「ワイルド・スピード」とか「ローグワン」みたいにCGで寅さんのシーンを作るわけもない。その安心感があるのでどっぷりとストーリーに入れるのです。そしてそのストーリーも実に良かった。いろんな人がこの映画を見たときに必ず自分を投影できるキャラクターが存在している。どれも印象的でしたが夏木マリと後藤久美子のシーンは特によかったです。後藤久美子って基本が棒読みなんだけどそれに耐えてあのシーンだから余計にグッと来る!

この作品を見るのに過去作は見たほうがいいか?ってのが気になりますが、見てなくてもまったく問題ないと思いました。とても丁寧に過去作が引用されるし、それはちゃんと現在のストーリーに沿って出てくるので細かい人物の関係性がわかっていなくても全部この1本で説明してくれます。

時間があるので事前に予習して置きたいという人は1作目と夏木マリと浅丘ルリ子が出てくるのを見ておくと深みが増すと思います。あと余裕があれば後藤久美子が出ているやつかな。

いずれにせよ映画館のロードショーで寅さんが見られるのはこれが最後になるかもしませんからぜひお正月に見て下さい。高齢者も多く巨大なお茶の間みたいな映画館でみんなが寅さんが出てくるたびに大笑いするピースフルな昭和の映画館のムードを体験出来ます!

以上、新宿ピカデリーからお送りしました。