物件を借りて飲食店を始める場合に保健所にどのように営業許可を申請するかについてお話しましょう!

飲食店というのは不思議なものでそこで料理を提供する人に免許が必要なわけでないんです。例えば調理師免許を持った人が必要か?というとそうではありません。飲食店を経営するにはその場所に「食品衛生責任者」の資格を持った人が必要になります。この資格は講習に行くと誰でも1日で取得できるものです。

そしてその場所が飲食店として営業するためには保健所の「営業許可」を取る必要があります。この「営業許可」には大きく分けて「喫茶店営業」と「飲食店営業」があります。よく不動産の言葉で「重飲食」とか「軽飲食」とかありますが正確に関連性はありません。「喫茶営業」はドリンクとトースト程度のものを出すための簡易なものですが、アルコールを出す場合はすべて「飲食店営業」になります。

「喫茶店営業」は「冷蔵施設・客席・客席便所」が「飲食店営業」は「冷蔵施設・洗浄施設(2槽以上)・給湯設備・客席・客用便所」が条件となります。こう書いてもわかりにくいのでもう少し具体的に説明しましょう。

まず手洗器です。保健所は客用のトイレを従業員も使う場合にトイレ内で手を洗ってもドアを開けたりした時点で厨房に菌が持ち込まれることを懸念しますので厨房の中に専用の手洗器を設置する必要があります。よくコンビニのカウンターに手洗器があったり吉野家や松屋のカウンターの内側に小さい手洗器があるのはこの基準を満たすためのものです。

「飲食店営業」の場合は厨房内に給湯施設が必要となります。シンクは2槽が最低基準となります。大きさは目安がありますが厳密な決まりはなく一般的な業務用シンクなら問題ないようです。食洗機がある場合は1槽とカウントされるのでシンク1槽の食洗機1槽で2槽となります。これにプラス従業員用の手洗器となります。

冷蔵施設は冷蔵庫のことですが厨房内にある必要があります。客席にドリンクショーケースなどを置くことは可能ですがそれだけを冷蔵庫として申請することはむつかしいようです。

保管設備はお皿やグラスなどを扉付きの設備に収納する必要があります。営業中にグラスをむきだしで置いている場合がありますが閉店したら扉付きの設備にしまうのが前提となっています。

その他にはねずみや昆虫よけの防除設備や耐水性で清掃しやすい構造の床など細かい基準があります。このあたりは保健所が出している「食品関係営業者の手引」(pdf)を参照してみてください。

保健所は区ごとに管轄がありますので営業をはじめようとする物件の住所の保健所に申請します。申請プロセスは「事前相談」>「申請書類の提出」>「施設検査の打合せ」>「施設完成の確認検査」>「許可証の交付」>「営業開始」となります。

実際に保健所に行くのは「事前相談」と「申請書類の提出」の2回。準備がしっかり出来ていれば1回でも大丈夫です。「確認検査」は保健所の担当者が実際に物件に来て提出した図面どおりに衛生設備が揃っているかを目視して検査します。問題なければ即日営業許可が出ます。許可証の発行には数日かかりますが保健所により即日営業開始してもいいと言われる場合もあります。

以上が保健所の営業許可を得るためのざっくりした流れです。

ヒマナイヌ川井は「ヒマナイヌスタジオ神田店」を立ち上げる時にすでに「食品衛生責任者」を取得していました。また構造的に基準を満たせず「神田店」の飲食店営業は断念したのですがその時に保健所とかなりのやりとりをしたのでこの「営業許可」プロセスについては一通りの知識はありました。

「高円寺三角地帯」は不動産屋の図面を見たときから「飲食許可」が取りやすい物件だというのがわかっていました。それはもともとが飲食店だった居抜きなので構造的に「飲食許可」が取れていた物件だったからです。ただし前のテナントさんは時計屋さんだったので飲食店としては経営しておらず給湯施設と水道管が配管されていないなど工事が必要な箇所があることはわかっていました。

そこでまず保健所の「営業許可」を申請するときに提出する「営業設備の大要」に添付する「配置図」を作ることにしました。これは飲食店として営業するためにどのような設備を追加する必要があるか?どんな工事をする必要があるか?を自分たちが把握するための作業でもあります。

図面作成にはスタッフで共有しやすいGoogleスライドを使いました。パワーポイントやキーノート、イラストレーターなどを使うとローカルファイルを扱うことになるのでバージョン管理などが煩雑になります。Googleスライドなら作成中に常にクラウドに保存され共有したメンバーで同時に編集も出来るので便利です。まずマスタースライドにマス目を作り物件が1枚に収まるような縮尺を決定します。

現場で採寸した壁や柱をこのマス目を使って太線で作り回転させたりしながら図面を作ります。こうして出来たのがこの平面図です。今回は厨房部分はかなり忠実に作りましたが客席部分は斜めの角度などがラフなので不正確な部分もあります。
「高円寺三角地帯」汎用図面

この平面図をベースにどのくらいのお客さんが入るかをシミュレーションします。「高円寺三角地帯」は飲食が出来るライブ配信スタジオがコンセプトなのでだいたい出演者+見学者の20人程度がいちどに入っているイメージとなります。
「高円寺三角地帯」全体図面
この20人にドリンクと簡単なおつまみを提供するためにどのような厨房施設が必要になるか?を考えていきます。厨房施設の初期投資はなるべく抑えたいので「営業許可」を取るための必要最小限の投資で考えていきます。例えば「食洗機」や「オーブン」や「業務用IHコンロ」などは飲食店としてメニューをテコ入れするとか経営が軌道に乗ってきてから拡張すればいい部分になります。

「高円寺三角地帯」厨房計画
今回の申請プランでは新規に「2層シンク」と「扉付き食器棚」だけを追加し、その他は「ヒマナイヌスタジオ神田店」から移設したものをレイアウトしました。これに給湯設備の工事を追加し2箇所からお湯が出るようにします。保健所での相談では給湯は1箇所でもいいが両方ある方が好ましいと担当者が話していました。

6月5日にこの図面を作り保健所に事前相談に行きました。担当者と打合せすると厨房部分に修正箇所の指摘はなかったのでそのまま申請書類にして提出してきました。許可申請手数料は18300円になります。

次にやるべきことは提出した図面どおりに工事を行い施設検査を行うことです。今回は6月22日を営業開始日に設定しているので6月16日までに必要な厨房機器を購入して設置し6月17日に水道管工事を行い6月18日に検査を受ける段取りにしました。この検査が無事通れば6月22日のイベントは初の「飲食店」イベントとしてアルコールなどを販売できることになります。

こうして急ピッチで開店準備を進めながらプロセスを書いています。この記事がこれから飲食店をやろうとする人の参考になれば幸いです。ありがとうございました。(シェア歓迎)