ベートーヴェン『ヴァイオリン協奏曲』 
ヤッシャ・ハイフェッツ、シャルル・ミュンシュ指揮、ボストン交響楽団

 

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10代の頃にはもう天才と言われていました。


ハイフェッツは、ロマノフ朝の滅亡とともにアメリカに亡命し、活躍した。という、20世紀の音楽家の多くがそうならざるを得ず、結果としてアメリカは世界で最も豊潤な音楽を生み出した国の1つとなったが、彼はそういう典型でした。

 

しかし、その演奏は恐るべきものであり、普通の意味の超絶技巧というものを遥かに超越した存在であり、未だに彼を超える人はないのではないだろうか。


ベートーヴェンが唯一残したヴァイオリン協奏曲を、これほどまでにスイスイと速いテンポで流すように弾きこなし、ベートーヴェンの持つ情念というものを一切削ぎ落としてしまうというあり方は、今聴いてもかなり仰天もの。


それでいて、無内容で無味乾燥ではなく、内実はものすごいものがあるが、それがあんまり情緒的なものとほとんど結びつかないので、とても無愛想で冷酷に聞こえてしまうのですね。

 

しかし、よくよくフレーズを聴いていると、結構ポルタメントを多用しているし、細かくヴィヴラートがかかっていて、ニュアンスに非常に富んでいる。

 

表面上はクールを装った人間離れしたテクニックなのですが、実際はものすごいエモーションを内に秘めているのでしょうね。

 

この曲は、ベートーヴェンでも屈指の、歌心だけで作曲してしまったような曲なので、タップリ歌った方がいいと思うのですが、そういう事は、ハイフェッツは一切しません。

 

そういう意味ではベートーヴェンの世界というよりもハイフェッツの世界が前面に展開するのですけども、それもここまで徹底的にやられると認めざるを得ないでしょうね。

 

また、何風とも言えないヴァイオリンは、安易な情緒に寄り添うような事を良しとしない、彼なりのダンディズムの貫き方なのでしょう。


猛烈なテクニックを持ったピアニストであったホロヴィッツの、自由奔放な感性の赴くままに弾きまくる痛快さとは真逆の世界を生涯追及した人ですね。


そう言えば、ホロヴィッツも亡命ユダヤ系ロシアでアメリカでな活躍した人でした。


テクニックは旺盛にあるけども、ここまでの境地に達した人はほとんど皆無であり、真の超絶技巧者というのは、クラシックに於いては、ハイフェッツを言うのでしょう。


1955年の録音ですが、RCAという当時のアメリカでは屈指の録音技術を持つレコード会社の録音ですので、驚くほどいい音で聴くことができます。

 

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