交通事故で父を失い、天涯孤独となってしまった、薬師丸ひろ子演じる、星泉。
低予算映画ながら、驚異的なヒットをととなった、薬師丸ひろ子を一挙にスターダムに押し上げた作品。
相米慎二と大林宣彦は、結局、当時のアイドルである薬師丸ひろ子、富田靖子を使って、自分の世界をやりたい放題作っているところが清々しく、そこが観客に大いにウケたんでしょうね。
相米慎二の現場は、映像からも伝わってくる壮絶なもので、何しろ、薬師丸ひろ子をクレーンで釣って、セメントの中に何度も突っ込んでいるのを長回しで延々と撮るという地獄ぶりです(笑)。
上島竜兵ではなく薬師丸ひろ子本人です(笑)。
しかも、冒頭では異常なまでのロングショットで薬師丸を撮影し、彼女に校庭でブリッジさせてますから(笑)。
とにかく、混沌とエネルギーを画面に打ち込むために、役者をトコトン地獄に追い込む。という相米慎二独特の演出方法を、ティーンズ向けの娯楽作品でも貫くというのは、ほとほと呆れてしまいますが、それ故に、公開からもうずいぶん経ちますが、異様なまでのエナジーを放っています。
『お笑いウルトラクイズ』という、ひどい番組(褒め言葉ですからね)がありますが、ダチョウ倶楽部もクレーンで吊られて、セメント漬けになった事はないでしょう。
また、ほぼ全編にわたって、長回しで撮影され、役者やスタッフをエグい状況に常に追い込んでおります。
溝口ともアンゲロプロスとも全く違う、様式的な美をトコトン拒否する映像は、相米監督独特の世界です。
このシーンは連続してまして、無許可で寺の境内で撮影し、ホントの暴走族を使ってこのまま新宿を暴走してます(笑)。
一緒に仕事をする人たちは、ホントに大変だと思いますが(笑)。
こんな無茶をやり続けても、大ヒットしてしまったのは、ひとえに原作のキャッチーさと、コレを見事に脚本化した田中陽一(鈴木清順とのコンビで有名ですね)の仕事が素晴らしいという事なのでしょうね。
晩年は『十津川警部』や『おみやさん』で演技派となってましたが、この頃までは渡瀬恒彦は、スタントなしで無茶なカーアクションをこなす人がでしたが、ココでも零落しきった「目高組」(薬師丸ひろ子はこの組の4代目の若頭役を好演しています。
こういう独特のヒキの絵の多用は、エドワード・ヤンが影響を受けたのかも。
しかし、やはり異様なのは、両脚のない三國連太郎ですね。
彼の演じる凶暴なヤクザ、「太っちょ」が語る「快感」こそ、本作のあまりにも有名な名シーンにつながっていくんですが、このカーツ大佐とほぼ同類の狂人を見事に演じております。
高校生の女の子がヤクザの4代目を継ぐ事になる。という荒唐無稽なお話から、鈴木清順もびっくりな強引かつアナーキーなエネルギーで撮ってしまった、相米監督の腕力には恐れ入りました!
低予算映画というよりも、ものすごく予算をかけたATG映画と呼ぶにふさわしい、アナーキーな傑作。
コレも無許可の望遠レンズでの隠し撮りです(笑)。 角川春樹がよく起こりませんでしたなあ。