チェ・ドンフン『暗殺』



 


暗殺指令を受ける3人。

 

前作『10人の泥棒たち』に続き、チョン・ジヒョン(全智賢)を主演とする作品で、キャストも前作とかなりかぶりますね。

今回はタイトル通り、暗殺者たちの映画です。

舞台は、1930年代の日本の植民地下にある朝鮮半島で(上海や満州のシーンもあります)、日本の軍人の川口守と朝鮮人でありながら、日本側に協力している、カン・インヌクを京城(キョンソン。現在のソウルですね)で暗殺するのが彼ら彼女らの指令です。

 

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近眼の射撃の名手を演じる、チョン・ジヒョン。

 

コレを命令しているのは、独立運動家の金九(キム・グ)です。

 

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実際の金九。なかなか評価の分かれる人ですが、韓国では知らない人はいないです。

 

日本ではほとんど知名度はありませんが、彼は歴史上の人物で、大韓民国創立後、首相になった人です(大統領の李承晩と対立して、暗殺されてしまいます)。

日帝時代。というのは、未だに一部の日本人を過剰なまでのヒステリアに陥れる「国民のキズ」として、巧みに黒歴史化されていますけども、本作は、ジョン・ヒューストン『栄光への脱出』やジョン・スタージェス『大脱走』などのハリウッド映画に出てくるナチスによる支配、有り体に言ってそれは、『スターウォーズ』の帝国軍のようなものであり、要するに、物語を成立させるための設定でしかありません。

 

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あっ、『10人の泥棒たち』のポパイが。

 

こういう設定は、2017年に日本でも公開されたパク・チャヌク『お嬢さん』にも継承されていて、韓国映画での日本の描き方も、相当な変化が起きている事がわかりますね。


余談ですが、暗殺者の1人が『お嬢さん』の変態上月役ですね(笑)。


この日帝時代の描かれ方は戦後の日韓関係に於いても、とても大きな出来事だと思うんですけども、コレを書籍でキチンと指摘しているのは、ジャズミュージシャンの菊地成孔さんくらいしか見かけないのは、大変残念な事です。

本作は、金庸の義侠小説のような、凄腕の義侠たちによる、悪漢官僚の暗殺。という、東アジアの人々の鉄板と言ってよい内容ですが(日本の「必殺!シリーズ」はそのヴァリエでありましょう)、前作同様、裏切りが1つのテーマとなっており、そこがこのお話を面白くしております。

 

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京城の三越の店内の素晴らしさ(実在しました)!


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悪漢、カン・インヌク。日本の爵位を得ようとするが。

 

タイトルから分かる通り、最後は壮絶なアクションとなるわけですけども、そこで戦う3人は、『男たちの挽歌』のようでいて、実は、人間関係がそうなってないのが、ひとひねりしてあって、単なる、ペキンパー&ジョン・ウーリスペクトにはなっていないところが面白いですね。

 

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アクションは完全にジョン・ウーでございます!


残念なのは、暗殺のターゲットであるはずの川口大尉が、マックス・フォンまでとは言いませんが、もうちょっと悪役としての凄みが足りないというか、なんというか、彼だけが全体のキャスティングの中でもスポンと存在感がないんですよね。残念。

ラスト近くで『灰とダイヤモンド』の有名なシーンのパクリがなんと、2つもありますので、注目。

それにしても、2010年代の韓国映画のクオリティの高さは一体なんなのだ!

 

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意外とコミカルなシーンが多いです。

 

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