Marion Brown『Vista』(impulse!)


Personnel ;
Marion Brown(as, wind chimes),
Stanley Cowell(p,el-p, mabiro),
Anthony Davis(el-p, p),
Bill Braynon(celeste, el-p),
Reggie Workman(b),
Jimmy Hopps(drms, cymbals),
Ed Blackwell(drms, slit drum),
Jose Goico(tambourine, congas, finger cymbals),
Harold Budd(celeste, gong),
Allen Murphy(vo, bells)

Recorded at Generation Sound, New York, in February 15, 18, 19, 1975



  正直言って、60年代のフリージャズの熱心な聴き手とは言えない私にとって、マリオン・ブラウンは、コルトレインの壮大なる失敗作『アセンション』に参加している人。程度の認識でした。

本作はインパルス!での最後の録音となるのですが、予想外にいいアルバムでの大変驚きました。

いわゆるフリーの作品ではなくて、今だと「スピリチュアル・ジャズ」とかに分類されるであろうアルバムで、多分、ゴリゴリにフリー好きな人からは総スカンだろうし、かと言って、オーソドックスなものを聴く人は存在すら知らないアルバムかもしれませんね。。

ドン・チェリーとか、ガート・バルビエリ(「ガトー」というのはスペイン語としては誤り)や70年代のECMのヤン・ガルバレクとかコリン・ウォルコットなどの動きが好きな人だったら、かなり気にいると思うのですけども、「マリオン・ブラウン」というのがどうしてもフリーに見られがちです。

驚くのは、スティーヴィ・ワンダ「Visions」が演奏されている事ですね。

ヴォーカルがゲストに入って、原曲をそれほどいじらずにシンプルに演奏しているのがとても好感が持てます

というか、これ、相当早い段階でのこの曲のカヴァーですよね。

全体として、穏やかな曲が多く、マリオン・ブラウンのアルトも実にソフトかつメロウに吹かれていて、なんともしみじみとた情感があります。

マリオン・ブラウンはサックス奏者として決して優れた人だとは思いませんが、ココでの肩の力が抜けた音は、私には好ましく思えます。

このアルバム、曲によって参加メンバーが異なりますが、メンバーをよく見ると、60年代には、強力なリーダーのサイドをつとめていた人が多いですね。

レジー・ワークマンはジョン・コルトレイン、ジミー・ホプスはローランド・カーク、エド・ブラックウェルはエリック・ドルフィー、そして、コルトレインに接近していたマリオン・ブラウン。

なんというか、巨人たちが大暴れした後に取り残されてしまった人々にも思えなくもない。

そういう人たちがなぜか結集して作られたのは、なんと、柔らかいジャズだったという。

私は本作を思想的な転向とかそんな見方をするつもりはなくて、むしろ、音楽的な内容は深まったのではないのか。と見ています。

ちょっと見逃されているような位置にある作品かと思いますので、是非とも。




このエントリーをはてなブックマークに追加 Share on Tumblr