高畑勲、宮崎駿『アルプスの少女ハイジ』 その1

 

 

 

画面構成。というあまり聞いたことがないような役職に宮崎駿を起用して作られた、高畑勲の最高傑作。

高畑勲の演出は第1話から驚いてしまいますね。

 

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こんなマトリョーシカみたいな姿で初登場します。


デルフリ村から、アルムおんじの家の前に行くまでて1話なんですよ。

子供向けアニメでそんなゆっくりとした展開って、ありますか、普通。

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暑くて全部脱いでしまいます。「裸の人」となったんですね。

 

第2話になってようやく家の中に入るんです。

コレはなんでしょうか。

ハイジの中の時間感覚を忠実に再現しているんですね。

見ている子供は完全にハイジの視点で時間を感じるように考えて演出してるんですよ。

こんな事を考えてアニメーション作った人は、恐らく世界的に見ても、高畑勲しかいないんじゃないのか。

とはいえ、テオ・アンゲロプロスみたい中の画面でコレが展開したら、子供は3分も見ませんよね(笑)。

そこで重要になるのが、画面構成なんですよ。

ここに、天才宮崎駿を起用しているところに高畑勲のすごさがありますね。

この作品、特に最初のアルム編の前半は、時間経過がものすごくゆっくりですけども、カット割りがものすごく多いんですよ。

 

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デーテは突然アルムおんじの孫のハイジを押しつけてしまう。

 

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アルムおんじ。彼の息子トビアスの娘がハイジなのですね。

 

 

キャラクターにあまり動きがない分、視点が実によく変わります。

そして、そこに配置されている人物や動物がどのように配置されていると画面にリズムが生まれるのかを実に考え抜いていたのが、宮崎駿です。

 

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こんなにウマソなチーズはない。

 

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くー、ウマソ感満点!

 

子供の時はハイジに移入して見ますから、気がつかないんですけども、大人になって見ると、それが実にわかります。

だからダレないし飽きてこないんです。

ある意味、戦後の小津映画と双璧かもしれないですね。

それを子供向けアニメでやっている高畑、宮崎のコンビは一体なんでしょうか(笑)。

 

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子ヤギのゆきちゃん。動物もほぼ登場人物として扱っていますね。

 

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子トリのピッチーを守るヨーゼフ。カタツムリが好物。

 

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山羊飼いのペーターを通じてふもとのデルフリ村の人々がアルムおんじがハイジを大切にしている事を知る。

これまたウマソ感高し!

 

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ペーターのおばあさん。とても貧しい生活をしている。この盲目のおばあさんを助けたいという気持ちが本作の重要なテーマと結びつきます。


最近は某学習塾のCMでやたらといじられている作品ですが、チャンと全話見た方がよいでしょう。

 

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