Amazonプライムビデオで邦画を見て古い東京のロケシーンを楽しむ「映像考古学」の時間がやってまいりました!(新しい冒頭定型文!)

今回は吉永小百合主演の1965年日活映画「父と娘の歌」です!この文部省選定チックな硬いタイトルに何の興味もわかなかったんですが見終わった今となってはめっちゃお勧めしたい邦画です。何がすごいって吉永小百合ちゃんとピアノ弾いてる!ピアノやってる人が見たらたいしたことないかもだけど、それでもかなり頑張ってます。特にラスト10分まるごとチャイコフスキーのピアノ協奏曲なんです。90分の映画の10分まるごと演奏シーンってすごくないですか?ここだけでも見る価値があります!

ロケシーンもすごく多い映画なので楽しめます!では、見ていきましょう!


1965年(昭和40年度)芸術祭参加作品。なんか気品があります。

冒頭は羽田空港のシーンからはじまります。4発エンジンのコンベア880です。世界最速の中型ジェットと言われた飛行機らしいです。ダグラスDC-8が席巻する前の機体ですね。

最近見るボーイング777などの巨大なエンジンを見慣れていると小ぶりですよね、この時代のジェットエンジンは。

1970年の日本人の海外渡航人数が9.3万人。海外へ自由に渡航できるようになったのは1964年です。この映画はちょうどその翌年に撮影されています。羽田空港も本当に限られた人しか利用しない庶民には夢のような場所だったに違いありません。

ここではシネマスコープで広角パンで羽田空港のロビーが映ります。すごく全体がわかりやすいショットで貴重です。

売れっ子ピアニストが凱旋帰国で報道陣が追っかけるというシーンです。

ドアを出ると車寄せがあります。

主人公の吉永小百合は母に先立たれ宇野重吉扮する父親に育てられています。こういう清貧な設定が吉永小百合には似合います。

この団地は表参道の同潤会アパートに見えますが未確認です。

玄関の特徴的な意匠。これはロケではなくセットかもしれません。

クラリネット奏者の父は体を壊し肉体労働をしています。音大を目指す高校生の吉永小百合は壁にある白い鍵盤で日々イメトレをしているという設定です。泣ける。。

通勤路は自由が丘の商店街ロケになります。ここでピアノ屋さんを覗いて音楽へのあこがれを表現しています。

モノクロのシャープなシネマスコープで見る当時の街並みはぐっと引き込まれますね。

楽器店は実在の商店だったのでしょうか?高い建物が少ないこの時代は路面に太陽の光があふれるのがたまりません。

こちら浜田光夫扮するお坊ちゃんの家。まるっこい車はあとで調べます。 →追記:これはルノー4CVを日野が1953年から1963年までノックダウン生産した日野ルノー4CVだそうです!

この映画は演奏シーンに曲名がタイトルで入るんですが結構俳優にもやらせています。かなり特訓したんでしょうね!

吉永小百合は撮影時は20才で17才の役をやっています。照明によっては口元の大きなニキビがよくわかるのが初々しい!

学校が終わるとピアノの練習をして料理をして父親の帰りを待つという清らしい生活です。

学校でガリ版を借りてベビーシッターのアルバイトのチラシを作るところ。学校もおおらかですね。

自分の家にピアノがないからピアノのある家のベビーシッターをして練習しちゃおうというちゃっかり作戦。1時間200円のバイトという設定でした。

ぴかぴかの団地。バラックみたいな家が多かった当時の憧れですよね。国立競技場横の霞ヶ丘団地かな?と思ったけど日活だから調布周辺の団地でしょうね。ちょっと特定できていません。

団地は同じようなレイアウトが多いから特定がむつかしいジャンルですよね。


どんな風景にも吉永小百合がフレームインすることで清々しい希望のようなものを感じる!当時熱狂的なファン「サユリスト」が生まれたのもわかります。

クラリネット奏者なのに呼吸器の病気で肉体労働しなければいけないというシーン。どこかの貨物駅ですね。いま電通とかがある汐留の貨物ターミナルとかでしょうか?後ろのダンプカーはあとで特定します。

武道館のシーンです。特徴的なのですぐわかりますね。

学生服のまま行列する人々。そういえば制服のまま放課後を街で過ごすという感じのシーンは当時の映画に多いですよね。

ベビーシッター先で子供たちに「なにを弾いてほしい?」と聞くと「鉄腕アトム!」「ひょっこりひょうたん島!」とリクエストされるシーンです。ちゃんと「ひょっこりひょうたん島」を歌います。かわいい。。

こちら大作曲家の豪邸です。一瞬「東京ジョー」の中野のお屋敷と同じかな?と思ったけど確かめたら全然違いました。世田谷あたりのロケでしょうか?

ここの住宅地の角は何度か出てきます。坂道を曲がると奥に京王線が通るのが見えます。鉄塔などからどのあたりか推測できそうな要素もあります。

こちらアメリカ空軍のKANTO MURA ANNEXと表示されています。関東村というのは現在の代々木公園が米軍の代々木ハイツだったのがオリンピックの選手村になることから府中に移転された施設です。Twitterからの情報によれば調布飛行場の横あたりで現在は警察学校の付近らしいです。

有刺鉄線のある米軍施設らしいところをセーラー服の吉永小百合が走ります。

こちら渋谷駅前。ちょうど現在のヒカリエのあたりから東急東横線の特徴的なファサードを見るところですね。

フランス洋菓子店という喫茶店に入ります。

ここからちょうど窓越しに東急東横渋谷駅が見えます。あまりにも綺麗なのでスクリーンプロセスかな?とも思いました。

でもアングルが変わるとちゃんと窓の外の景色のパースまで変わっているんですね。スクリーンプロセスでここまでやるかなぁ?という感じもするのでロケなのかもしれません。ヒカリエになる前はプラネタリウムで有名な東急文化会館だったわけですが当時のテナントを見てみると喫茶店は入ってないんですね。フランセで調べると ヒカリエの2軒横にあるビルということがわかります。このビルは1995年に建て替えられているのでその前のビルでロケしたのではないでしょうか?

そしてこの映画の美的センスを象徴するカット!落ち込んだ吉永小百合が力なくトボトボ歩く印象的なシーンです。

本当に美しい!監督とカメラマンの美意識をビンビン感じますね!

で、ここはどこなのよ?という話なんですが駒沢オリンピック公園と思われます。この当時東京でこれだけモダンで整理された空間というのはやっぱりオリンピック関連施設ですよね。

うっとりする構図です。もう完璧!街灯のモダンさが今見ても素晴らしいですね。

そして落ち込んだ吉永小百合をデートに誘い元気づけるシーンは現在の東京ドームシティの後楽園遊園地です。

オクトパスっぽい遊具がぐるんぐるん回ってます。

ベンチでひとやすみ。後ろの賑わいがいい感じです。

そして俯瞰ショット!クルマはショールーム的な展示車でしょうかね?

こういう広角俯瞰カットは何度も見てしまいます。写真と違って映画は動きがあるからいいんですよねぇ~。

当時のジェットコースター!炭鉱のトロッコみたいな顔をしています。乗ったことある!というアラカンな読者の方も多いのではないでしょうか?

車載カメラのカットもあります。周りの風景も見えていい感じです。

観覧車のカットもあります。今と違ってふきっさらし!ゆりかご状態です。

うしろの白山通りの商店なんかもパンフォーカスでばっちり映っています。これは映像考古学的には美味しいカットです!

これ聞いたことある?とレコードを差し出すシーンです。カセットは絶滅したけどレコードは生き残っているので現代から見てもなにこれ?というカットにはならないで済んでいますね。

上野発の特急ときでせんだいに行くシーンです。暗いのに撮れてますね!

なんかとってつけたような駅名の看板。もしかしたら東京近郊の駅をせんだいにして撮ったのかもしれません。

仙台は駅だけしかシーンがないので偽装セットの可能性は高いですね。

列車に乗ってる人とそれを追いかける人というのは映画的な王道カットですね!映画スタジオで鍛えられた撮影班の職人技が冴えるシーンです。素晴らしい!

そして脅威的なクライマックスの演奏シーン。セリフもほとんどなくチャイコフスキーピアノ協奏曲が10分続きます!

ここ吉永小百合は本当に弾いています!このアングルはピアノやってる人ならどれくらい正確に弾けているのかわかると思いますが、かなりの迫力でした!

そしてめっちゃ唐突に終わります。父と娘の確執が解けた演奏シーンなのに最後に吉永小百合の笑顔のアップはなし!つまり観客の想像にゆだねます。くぅ~~~~!しびれた!

この映画ロケ的にも音楽映画としても超お勧めです。吉永小百合のピアノの迫力に対してまったく練習した気配のない宇野重吉のクラリネット演奏の嘘くささも楽しめます。

以上、Amazonプライムビデオからお送りしました!(プライムビデオはプライム会員なら無料で見られます)

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ハナ肇に見えるけど違います。