1963年公開の日活映画「いつでも夢を」は定時制高校に通うヒロインとトラック運転手の恋の物語です。


舞台は荒川沿いの町工場!

劇中に荒川沿いの風景がたくさん出てきます。

ヒロインは吉永小百合です。見てください!この初々しい割烹着姿!

主演は橋幸夫で有名な主題歌「いつでも夢を」を吉永小百合とのデュエットで歌います。

この曲は烏龍茶のCMで使われたりしたので聞いたことある人も多いと思います。

高度成長期の未来はきっとよくなるという確信に満ちた清々しい名曲です。最近だとNHKの朝の連ドラ「あまちゃん」の劇中でも使われていますね!


そしてどうですか!この美しい工場地帯の夕日!最高です!ウルトラセブン世代はメトロン星人との戦いのシーンを思い出しますよね!

実相寺監督は絶対にこのショットを再現しようとしたに違いない!そう思わせるくらいのインパクトがあります。

映画は見る角度によって本数が変わることからオバケ煙突と言われた千住火力発電所の近辺で進みます。

アナモフィックレンズを使ったシネスコ画面はパンすると画面の端がニュッと歪むのが特徴です。

川沿いにある診療所が吉永小百合の家という設定になっているのですがカットを割らずに位置関係を説明します。

荒川の土手沿いでゴルフするシーンも出てきます。

そしてこの映画のキーカットになるのが木造の西新井橋です。欄干にはひらがなで「にしあらいばし」とあります。

wikiによると現在の西新井橋はここから80mほどズレた位置に1955年(昭和30年)に着工して6年がかりで作り1961年(昭和36年)に開通したことになっています。(新しい西新井橋の構造設計などはこのpdfが面白いです)

これが現在の西新井橋です。


時空探偵の必須アプリ「東京時層地図」で昭和36年に戻ると橋が2本あります。左がこの映画に出てくる西新井橋ですね!



昭和20年に遡ると橋は1本になります。



この映画は1963年1月公開です。撮影時期は土手の草の色から1962年の秋ごろと思われます。もう新しい西新井橋は完成してるはずなのですが画面には見えません。

この映画は西新井橋が2本あった80mのズレをうまく使って古い西新井橋だけで撮影してるんですね!(荒川沿いの今昔はこのpdfが興味深い)

この木造の西新井橋が近く取り壊されることがわかっていたので映画のキービジュアルに使ったのかもしれません!


路面はコンクリートですが欄干は木造です。ここをヒロインの吉永小百合が自転車で走ります。

全景も出てくるので橋の構造がよくわこります。オバケ煙突もしっかり右に登場しています。いいアングルですね!

全景ショットで橋の構造がよくわかります。支えるポイントがめっちゃ多い!!

映画のクライマックスでは見事なドリーショットがあります。就職試験に落ちてふさぎ込んでいる青年を吉永小百合が手を引き川沿いを走ります。

土手から荒川までカメラをグァッーーと横に移動して1カット!躍動感のある見事なショットです!

後ろに西新井橋の全体が見えます。今の橋と違って支柱が多いのがよくわかります。大正11年に作られた橋ですから戦争の空襲でも焼け落ちなかったんですね!

それにしてもなんたる清々しい表情!吉永小百合が画面の中にいるだけで花が咲いてるようです!

河川敷でふてくされてる青年に橋幸夫がカツを入れます。バカ野郎!!バシッーー!昭和です!

そんな喧嘩した二人も爽やかに握手して仲直り!立ち直りが早いのが昭和の良さですね!

自転車で二人乗りして河川敷を西新井橋に向けて走っていくラストシーン!

カメラがパンして終わります。この西新井橋は1964年に取り壊され現存しません。映画の中だけに残る貴重な風景です。

この映画は全体に自然光でのロケが多くて昭和37年(撮影時期)の荒川沿いや東京の様子がよくわかります。

今回の記事では西新井橋にフォーカスしましたがクルマや都市の描写も豊富にあるのでその辺りは別の記事にまとめようと思います。

以上、Amazonプライムビデオからお送りしました!

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