これは香川県高松市のeとぴあ香川で行われる「擬似空撮塾」の教材映像である。

擬似空撮とはDJI OSMOのジンバル機能に着目し長い一脚を使って上空5mをドローンのように飛ばす撮影手法のことである。擬似空撮をするには実際のドローンの空撮映像を見ておくことが重要だ。

「アンダードローン 」

これはアートとしてのドローン撮影としてユニークな作品である。ドローンで撮った映像は必ず地上と空にわかれる。ドローン映像を天地反転させるだけでまるで他の惑星のように見えることに着目したユニークな作品である。

Underdrone from Claire&Max on Vimeo.

「ドローンアート 」

地域おこしの参考にもなる作品。雪に人が足あとをつけていくというプリミティブな行為をドローンで撮影している。カメラワークと編集のセンスで独特な世界観を作っている。あえてドローンの影を入れているところに注目したい。

Snow Circles from Beauregard, Steamboat Aerials on Vimeo.

「ドローンの醍醐味 垂直上昇 」


ヘリコプターとドローンの空撮はイメージが似ているがドローンにしか出来ないことは多い。垂直上昇もどのひとつで地上にとどまっているカットから上空までいっきに上昇していく様子をそのまま撮影することが出来る。ヘリコプターも垂直上昇が可能だがどこにでも着陸できるわけではない。
 


「ドローンパイロットのVR目線 」

ドローンはヘリコプターでは飛べないような低空飛行ができる。そのことがよくわかるドローンパイロットのVRヘッドセット目線の動画。機敏で高速な動きが空撮系のゆったりとした映像に慣れている目には新鮮に写る。


ドローンレースドバイ(プロモーション)

2016年にドバイ政府の後押しによって行われたドローンレースのプロモーション映像。空撮とは別にドローンはレース産業が今後花開いていく。自律飛行よりラジコンとしてのパイロットのコントロール技術を競うのが面白い。


ドローンレースドバイ(15歳の少年の優勝した飛行映像)

もはやSF映画「トロン」のようにも見えるドローンレースのドローン目線映像。15歳の少年が率いるチームが優勝し話題をさらった。


ドローンジャーナリズム(チェルノブイリ)
 

人が行けない場所を撮影できるという点でドローンはジャーナリズムと相性がよい。これはチェルノブイリの現状を撮影した作品。

The Fallout from AeroCine on Vimeo.


ドローンジャーナリズム(ネパール) 

災害の被害状況を把握するためにドローンは役立つ。ネパール地震の惨状を記録した映像。


ドローンジャーナリズム(シリア)
 

戦争の被害状況を伝えるためにもドローンは使われる。内戦で荒廃したシリアを記録した映像。


「音楽PVとしてのドローン活用」

大きな話題となったOK GOの音楽PV。ドローンを究極に使いこなした作品として評価が高い。ひとつのガジェットが映像表現自体を革新していくという例。


このようにドローン作品を続けて見ていくとドローン特有の動きやカメラワークというものがわかってくる。

擬似空撮とは何か?



擬似空撮はヘリコプターによる空撮、ドローンによる空撮でも絶対にできない未開拓領域である地上3mから5mを開拓する映像手法である。

擬似空撮はドローンで撮ったように見せかけることが重要なので自分がドローンになって飛んでいる(飛ばしている)気持ちになることが重要である。さらにテクニカル的にドローンと間違えるような映像にするには重要な要素が4つある。

・上下に歩行ブレがないこと
・左右の歩行ブレがないこと
・ドローンらしい速度感があること
・消失点を捉え続けるカメラワーク

このうち上下左右の歩行ブレをなくすには「能のすり足」を見習いたい。ジンバル機能がついたDJI OSMOはカメラ自体の回転やブレを抑える機能はあるが上下の振動はあまり吸収できない。ひょこひょこと歩くのではなく「能」に見られる「すり足」のように上下に揺れない歩きが重要となる。

ただし擬似空撮は長い棒にカメラをつけて歩く技法であることから転倒などすると通行人に怪我をさせてしまう可能性もある。ドローンではないので墜落はしないものの歩き方には細心の注意が必要である。



ドローンらしい速度感を出すには早足で歩く、もしくは軽く走る必要がある。編集で速度を変えてコマ落としのようにすることもできるが、通行人が多く写っている擬似空撮の場合は人の動きが不自然になる。このあたりのバランスは常に撮影時の状況と安全の確保に注意しながら判断したい。

消失点については後述する。

擬似空撮の基本的なセット
(DJI OSMO+一脚)


江戸時代の参勤交代
 

回転ブレを防ぐ横棒
 

人の頭上を飛行する擬似空撮 

5m上空から広角レンズでやや下向きに捉える擬似空撮は前方10mくらいからフレームに入るので人の頭を飛び越えているように錯覚させることが出来る。ギリギリで飛び越えてるように見えるが実際は画面の下に人が消えてからカメラがその人に追いつくまで10m程度の余裕がある。人混みでカメラが蛇行しないように直接に歩くためのサポーターが重要となる。



キューブリック一点透視法
擬似空撮は2パイロットで撮影するのが基本となる。ひとりはカメラをまっすぐブレずに動かすことに専念する。もうひとりは制御アプリからOSMOのカメラヘッドをコントロールする。タップで露出補正、長押しタップでカメラヘッドの制御になる独特な操作体系。最初に長押しタップする位置によってそこからワンストロークで動かせるカメラヘッドの範囲が決まる。その時に重要になるのが消失点である。これは一点透視法とも呼ばれるが映画監督のスタンリー・キューブリックが名手として知られている。この動画をみると移動撮影における消失点の把握がいかに重要であるかがわかる。


擬似空撮による上昇、追い撮り、回り込み
こうした擬似空撮の基本的なセオリーに基づきビデオサロンの記事のためにモデルを使って浅草・上野界隈で撮影した映像。高度が変わらない擬似空撮は比較的難易度は低い。人物を追う「追い撮り」や建築物や銅像などを回りこむ「回り込み」も2人のパイロットの息が合えばすぐ出来る。もっとも難しいのは上昇、下降を加えたショットである。これは5mに伸ばした一脚を90度一定の速度で倒していくのでカメラ保持が難しい。その倒していく時にカメラヘッドを消失点を捉えたまま保持するのにも高度なカメラヘッド制御が必要となる。
 

今回の「擬似空撮塾」ではこの映像の撮影素材を見ながら「擬似空撮」における技術的な解説と適した撮影状況、撮影対象物、そしてこの技法を使った町おこし映像の可能性について講義する。

(2758文字) 

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