緒形拳演じる漁師が佐藤浩一にマグロの一本釣りを教える「魚影の群れ」は1983年制作で青森県の下北半島にある大間がロケ地の大半を占める相米慎二監督作である。

近年では「バードマン」が驚異的な長回し演出で話題になったが日本で長回しの巨匠と言えば「セーラー服と機関銃」「台風クラブ」の相米慎二である。


「魚影の群れ」は1カットが長いのでロケーションの場所がよくわかりカメラの動きなどから場所が特定しやすい。

今回は大間漁港に行く機会があったので周辺で撮影されている5カットを検証する。

1カット目。夏目雅子が勢いよく「みんな!マグロ釣れたよー!」と自転車で坂を下りてくるカットがある。金麦のCMのようなハイテンションである。


この坂はすぐに見つかった。カット頭のアングルは望遠で35mm換算700mmを超えるレンズで捉えていたことが検証からわかった。 スタンドインのおじさんに夏目雅子の初々しさの欠片もないのが惜しい。


この右にある材木屋さんは現在もありそこで当時の様子を知るYプロジェクトの島康子さんに話を聞く事が出来た。

「魚影の群れ」の方言指導はあそこの床屋のお母さんが担当したのよ。撮影期間に緒形拳さんは漁港をぷらぷら歩いてたけど漁師にしか見えなかった。あの方言は完璧!

と大間の地元っ子もお墨付き。この作品での緒形拳の演技は一見の価値がある。


夏目雅子が自転車で降りてきて横断歩道を2つ渡り漁港を左に曲がるシーンはズームを使った1カットで撮られている。坂のカーブ具合やその高さから現在の青い森信用金庫の白い建物の屋上から撮ったと推測できる。


これがそのカット尻。俯瞰で漁港を捉えており灯台が小さく見えている。画面に映っている下北信用金庫は撮影ポイントと思われる手前のビルに移転したので現在はこの位置にない。信号機より高いところから撮られていることがわかる。


奥の建物は変わっているが左の赤茶色の建物は同じに見える。


2カット目。緒形拳が自転車に乗って大間漁港を走っているシーンも長回しで撮影されている。


背景にある漁港の倉庫は現存する。左の柱も同じ位置にある。


カメラが左にパンをする。


現在は階段は埋められており段差がなくなっていた。


このカットの後半は緒形拳が娘役の夏目雅子と話す。


大型漁船の停泊のためのコンクリートが増えている。


3カット目。緒形拳と夏目雅子が漁港を歩く印象的なカット。これは船から撮られておりかつ移動している。カメラの防振装置が発達していなかった1983年なのに驚異的なカメラワークである。

そのカット頭は止まれの標識がある路地から二人が漁港に歩いてくる。


止まれの交通標識も左の黄色い壁の家も現存する。


この移動ショットの途中に奥に印象的なタイルの商店の看板が見える。


この店も当時の現存する。現在は手前に建物が建っており漁港からは見えないが1本裏の道に出ると確認できる。



そして今回の「魚影の群れ」大間漁港ロケ地特定でいちばん驚いたのがこの背景にあるプレハブである。文字がスプレーで書き殴ってある。


これがロケから33年経つ2016年にも現存する!美術で建て込んだプレハブではなく漁港の既存の建物だったのだ!


4カット目。さらに驚いたのが漁師が集まり呑んでいるこの小屋である。緒形拳が中で漁師仲間と呑んでいる時に佐藤浩一は夏目雅子に背中を押されながらこの小屋に押し込められる印象的なシーンだ。


この小屋も現存した!「魚影の群れ」はAmazonプライムビデオにあるのでnexus7でシーンを再生しながら検証する。


小屋には大漁という文字が入っている。


この小屋だ!!!構造や位置関係から間違いない!33年前と同じ位置にある!


しかも大漁という文字は消えかかってはいるが薄く残っている!


5カット目。印象的な映画のラストカット。これは漁港の事務所の屋上から撮られているが現在は移転してその建物は現存しないと地元の人が教えてくれた。


高さは違うが漁港事務所があったと思われる同じ位置から赤と白の灯台を見ることが出来た。


2月中旬はマグロ漁の時期ではなく人通りは少なかった。そのおかげで大間漁港ではゆっくりと「魚影の群れ」ロケ隊の足取りを追うことが出来た。漁港は海べりなので建物の痛みも早く映画に出てくるような小屋などは残っていないと思っていただけに大収穫である。 





その後、本州最北端で記念写真を撮った後は大間マグロのぶつ切り定食をいただいた。美味い!

相米組の足取りを追いながら帰りの新幹線でもう一度「魚影の群れ」を見直す。何気なく見ていた長回し1カットが自分の足で歩いて探した後は全く違った印象になる。

Amazonプライムビデオ時代の新しい日本映画の楽しみ方を体感できた。

以上、本州最北端の大間漁港からお送りしました!

追記:映画前半のむつ市内での田辺川ロケ地に関してのレポートはこちら。